シビック 暖まると調子が悪くなる原因

一日悩んだ案件。
『暖まると調子が悪くなる』らしい。
と、詳しいことが分からず、漠然と仕事を任されたので考えました。

車種
ホンダ シビック 平成10年式 EK3 AT

手っ取り早くググってみたが、はっきりと分からない、義父と同じでクリーナーをぶっこむ、とりあえずなんか交換という、はっきりとした原因と説明が分からないのばかりで全く駄目。
ちゃんとメーカーの作業書をみてみる事にする。

実際起こる症状

エンジンが暖まっていない冷間時はなんともない。アイドリングは安定している。
放置してアイドリングだけでエンジンが暖まるのを待つ(水温計は真ん中、ファンも回転)
アイドリングは一定で安定している。
ドライブに入れてみると、急に回転数が下がってエンスト寸前。ブオーンブオーンとストールさせまいと頑張っているので、ストールはしない。
発進するとまあまあ普通に走る。
しかし、よく観察すると微妙に不安定になりながら走っている。
等速で走るとかすかに分かる。
停車しようとブレーキを踏んで止まると、アイドリングはかなり不安定で止まる寸前で踏ん張っている感じ。
ニュートラルにすると安定したアイドリングになる。
ドライブだけではなく、NとP以外では不安定になる。
エンジンが冷えているうちはこの症状は出ない。

まとめると、エンジンが暖まるとN,P以外入れるとエンジンの回転数が不安定になる。
走っていても微かに回転数が落ちるのが分かる。

警告灯は点いていない。
と、車屋さんに伝えると分かりやすく伝わると思います。

ぶっちゃけ難しい案件です

症状は出た。必ず起こる事も確認出来た。
しかし、警告灯が点灯していないので故障診断が出来ません。
幸いメーカーの作業書があるでそれをもとに故障診断をしていく事が出来るが、かなり面倒な感じ…。
とにかく今は平成31年。20年前の車なので色々な所がボロボロなのは間違いない。ゴムの部品はもちろん、プラスチックも脆くなっているだろう。スラッジも溜まり放題だろう。
ようは調子が悪いのは当たり前。もうお年寄りなのだ。
そんな車の修理は困難を極める。
例えば、エンジンが掛らないとか、窓ガラスが下がらないとかなら、確実に治るし、故障探求も少ない範囲済む。

まぁ、直らなかった時の言い訳です・・・

メーカーの整備要項で調べてみる

古い車なので修理書があるか不安だったが、ちゃんと整備解説書があった。
もっと幸いなことに、故障診断表があり、そこに症状がぴったり当てはまる項目が。

『暖機時規定回転数より低い』
 →『N,Pポジション以外にした時回転の落ち込みが大きい』

まさにピッタリ。
悪いと思われる部分は二箇所
『シフトポジション信号』
『RACV』
どちらも診断は難航しそうな部分だが、だいぶ診断範囲は狭まったので、この二箇所を順番に調べて行く。

シフトポジション信号の診断

ECUとシフトポジションコンソールスイッチへアクセスする必要があります。
シフトチェンジしてるよという事をミッションだけではなくECUに伝わっているかどうかを診断しているようです。
ギアをP,N以外に入れると、当然エンジンに負荷がかかり、回転数が落ちます。
本来ならば、回転数が落ちないようにECUが信号を出してエンジンの回転数を上げてるので一定で落ち着きます。
ここでの診断ではシフトポジション信号がECUに入ってきているかを調べました。
規定値の範囲にギリギリ入っていない部分が一箇所あり、コード間が短絡している可能性があるようですが、確実性にかけました。
確実ではないので、次の診断に移ります。

RACVの診断

RACVはスロットルバルブの下に付いているものです。
ロータリーエアコントロールバルブ略してRACVと呼ばれる物で、スロットルバルブだけでは調整しきれない吸気量を調整しているようです。
こいつがかなり怪しい・・・。
という事で診断していきます。
サーキットテスタを使って電圧やら抵抗やらを調べて行くわけですが、狭くてかなり厳しい作業でした。

ホンダ RACV

で、測定したところ、16~28Ωの所が30Ωの箇所がありました。
既定値ではないが誤差の範囲かなぁ。
これを故障と言い切るには微妙だぁという感じ。

ECUがする故障判断とは

よく壊れる寸前というのがあります。
最近の車は全てコンピューター(ECU)で管理されています。
異常があるとメーター内のチェックランプで知らせてくれるのですが、これが完全な故障ならECUもすぐに判断できます。例えば線が切れてるとかだと0と1なのですぐに故障と判断するんです。
ただ、今回のように規定値が16~28の間とかだとECUの判断が遅れます。
16~28って事は間を取って22Ωがビッタリの所って事なんでしょうか?それが何らかの影響で16Ωに寄っていったり28Ωの方に寄っていくわけですが、16や28では異常とは判断しないが、不良と判断する一歩前で明らかに不調なわけです。
今がその状態で、一番判断が難しい状態ですね。

最終判断

交換するべきなのは『RACV』でしょうね。
値段は19,800円です。
その他の付随する部品、工賃、点検料も貰うと3万円以上は欲しい所ですね。
点検にほぼ一日かかってますし・・・。
ただ、不安なのはRACVを交換したからと言って、他のところでスラッジが詰まってると結局は不調。
古い車だし、それほど大事にされている車でもないのでメンテナンスも行き届いてない。
要は次から次へと不調箇所は出てくるんです。
それを承知で修理するかどうかはお客様次第。
とりあえず、修理依頼されれば、手始めにRACVを交換することから始めることは間違いないですね。

で、結果は・・・

最後まで読んで頂いて申し訳ないですが、このお客様は結局直しませんでした。
うちの社長(義父)と話をしていたようですが、『調子が良くなった』って言ってました。
私はスロットルバルブクリーナーを数回吹いただけなんだけどなぁ。

まあ、病は気からと言いますからね。
私が乗った時は間違いなく治ってなかったけど、洗浄効果が現れて良くなったのかなぁ?
それともただ気の弱いお客さんなだけ?だったら申し訳ない・・・。
ま、修理しないって事だったので、サービスだから良いよね。
故障探求に一日かかったのに・・・